将棋名人戦第6局を振り返る両対局者=17日、山形県天童市、林敏行撮影
A図・△3五歩まで
B図・▲7五歩まで
C図・▲2五桂まで
4月に開幕した第66期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催)は、羽生善治挑戦者(37)が4勝2敗で森内俊之名人(37)を破り、名人に返り咲いて閉幕した。2カ月以上にわたった激闘を振り返る。(村上耕司)
■森内、秀逸な構想実らず
振り駒で第1局は森内が先手に。後手の羽生が角道を止め、相居飛車の力戦形となった。中盤は羽生が主導権を握っていたが仕掛けで形勢を損ね、厳しく切り返した森内が先勝。第2局は一手損角換わりで、羽生が意表を突く仕掛けを見せた。「展開が全然見えなかった」という難解な中盤戦だったが、羽生が終盤にわずかなスキを突いてリードを奪い、1勝を返した。
第3局は相懸かりで、森内が見せた挑発的な一手に羽生が仕掛けを見送り、徐々に劣勢に。森内の構想が秀逸で、終盤入り口では森内が圧倒し、完封状態だった。羽生は「一手違いになればいい」と執念を感じさせる指し手を続けた。最終盤で森内に、打った銀をすぐに取られる悪手が出て形勢逆転。羽生が後手番で貴重な2勝目を挙げた。羽生は「いい勝ち方じゃないので、結果にとらわれず次に臨もうと思った」と振り返った。
■羽生、神経戦の第4局制す
第4局は角交換から角の打ち合い、角の取り合いと序盤で派手な応酬があったが、中盤は一転してじりじりとした神経戦となった。A図は2日目夕刻休憩後、森内が△3五歩と仕掛けた局面だ。手数こそ56手だが、消費時間は羽生7時間47分、森内8時間23分と持ち時間の大半を費やしての開戦。羽生が最も印象に残ったという対局だ。「互いに構想の取り方が難しく、パスされても困るような状態でした」という。結果的にこの仕掛けが無理で森内が形勢を損ね、羽生が大きな3勝目を挙げた。
第5局は相懸かりから森内が意欲的な指し手を連発。B図は1日目の指し掛けの局面だ。羽生は次の手を封じたが「ここでは駄目だと思ってました」と振り返る。数手前に△7四歩と突いた時には、▲7五歩には△8六歩でいいと見ていたが、以下▲7四歩△8四角に▲5五角と出られる手を見落としていたという。その後、羽生も勝負手を繰り出したが、森内がリードを生かして快勝した。
第6局は相懸かりの戦型から森内の妥協しない指し手に羽生も強く応じ、形勢不明の複雑な中盤戦となった。勝負の分かれ目はC図。ここから△3八と▲3三桂成△同銀▲3八飛△6四歩▲2八飛と進んだが、と金を捨てた手が響いて羽生が優位を築いた。ここでは△2四歩▲3三桂成△同銀▲4五桂△2二銀▲2五歩△3八と▲2六飛(▲同飛には△2五歩)△1三銀と進めれば難解だった。
結局、七番勝負で後手番が勝ったのは第3局だけ。この逆転がなければ追いつめられたのは羽生だったかもしれない。羽生も「第3局の勝利が結果的に大きかった」と話した。