< 第33期名人戦挑戦者決定リーグ戦第24局 観戦記 >
依田紀基 九段
対
趙治勲 25世本因坊
2008年6月27日
|
「先生、棋風、変えられましたか」
戦いが終わった後に依田から出た言葉だ。
趙の碁が変わってきたのでは、という声があちこちで聞かれる。これまでは、単に地を取るのではなく敵の根拠を厳しく奪うことを真の目的とする、カラく厳しい棋風。当然、石は下を向く傾向が強かった。ところが、最近は上に向かうケースが目立ってきた。
「この碁もそうです。もっとも、昔から三連星は時たま打っていましたし、けっして中の碁が苦手というわけではありません」と解説の小松英樹九段。
伝説ともいえる、趙と小林光一による本因坊戦七番勝負3年連続決戦の最終シリーズ(92年)は、3連敗4連勝で趙が勝った。その最終局は、先番の趙が三連星から中央に大きな地を作って快勝。逆に、勢力をバックにしたときの趙のほうが強いとの説もある。
依田は黒番なら実利先行でサラサラと逃げるのが得意パターン。そんな2人がぶつかったものだから、34手まででこんな碁形になった。黒は四隅を手中にする勢いなのに、白には確定地と呼べるところが見当たらない。
左下白26からの定石は、依田が白の立場で大好きな姿。それをわざわざ相手に与えたのだから徹底して稼ぐつもりなのだろう。
趙はどう勢力を働かせるか。間もなく、思わぬところから戦いが始まる。
(松浦孝仁)