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矛盾の日々

2008年7月14日

写真家族で使うリビングに、パソコンのお古を置いている。子ども部屋には置かない方針。

 年季の入ったノート型パソコンが我が家にやってきた。夫が仕事で買い替えたためのお古だ。

 2階には私の仕事用デスクトップ型パソコンがあるので、お古は、1階のリビングに。家族で使えるようにと置いたのだが、ケーブルをひいてないので、ネットが出来ない。

 実際使ってみると、ネットが出来ないというだけで、パソコンの使用頻度はがたんと落ちる。そして、ひそかに願うようになるのだ。1階にも、ネットをつなぎたいなあ、と。

 本当についこの間まで、原稿をファクスでやりとりしていたのに、今や、家の上階と下階にないだけで、不安になる。この感覚に自分で驚いた。なるほど、タッチパネルですいすい、どこでもネットサーフィンできる携帯電話に、人気が集まるわけだ。最初は、販売店に並ぶ行列に、「そんなに欲しいか?」と冷ややかな目線を送っていたが、自分だって、気がつけば、家の各階でネットが出来ないと物足りないと思う感覚に陥っているではないか。

 ないならないでやっていけるはずなのに、一度便利さを知ってしまうと手放せないものが、この世にはあふれかえっている。車も、パソコンも、携帯も、電子レンジも。

 ものをもたないのがいいと思っていても、いつしか理論と感覚が肉離れをおこし始める。もうこれ以上、便利にならなくていいから!と、見えないだれかに叫びたくなる。でないと、よくばりで流されやすい私は、便利になればなるほど、からだが慣れていって、いろんなものを欲しくなるし、手放せなくなる。

 よく考えたら、1階にパソコンがないついこの間までは、なんの不自由もなかった。ところが、パソコンがきたとたん、ネットでつなげないという新たな不自由が生まれた。

 つくづく、自分は、よくばりな人間だと再確認する出来事だった。

プロフィール

大平 一枝(おおだいら・かずえ)

長野県生まれ。女性誌や文芸誌、新聞等に、インテリア、独自のライフスタイルを持つ人物ルポを中心に執筆。夫、12歳、8歳の4人家族。

著書に、『見えなくても、きこえなくても。〜光と音をもたない妻と育んだ絆』(主婦と生活社)、『ジャンク・スタイル』(平凡社)、『世界でたったひとつのわが家』(講談社)『自分たちでマンションを建ててみた。〜下北沢コーポラティブハウス物語〜』(河出書房新社)、『かみさま』(ポプラ社)など。【編集または文の一部を担当したもの】『白洲正子の旅』『藤城清治の世界』『昔きものを買いに行く』(以上「別冊太陽」)、『lovehome』『loving children』(主婦と生活社)、『ラ・ヴァ・パピヨン』(講談社)。最新刊は、『センス・オブ・ジャンク・スタイル』『スピリッツ・オブ・ジャンク・スチル』『ジャンク・スタイル・キッチン』(風土社)の3部作。

ホームぺージ別ウインドウで開きます「暮らしの柄」

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