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消費税を上げるなら、家と福祉施設は無税に

2008年7月13日

写真終の住まい 那須平田邸、メンテナンスフリーの外観写真同、トイレ。バリアフリーの手すりつき写真同、内部。ヒノキの能舞台があるケミカルフリーの自然住宅

 私の所属する東京世田谷南ロータリークラブの卓話に、メンバーの学友で自民党政調会長、元財務相の谷垣禎一氏をお招きし、大変興味深い政局のお話しを聞くことができました。

 帰りがけ「今の医療保険費、年金支給の見直しなど、医療や介護の財源難からみて消費税を上げることは避けられないとしても、元来、福祉資産であるべき住居と医療・福祉施設には消費税を掛けるべきではない、と言う発想はあるのでしょうか?」と質問してみました。

 話が唐突であったのと、できるだけこの種の質問を避けていたご様子で、「うーん……?」と、人懐っこい目と笑顔で逃げられてしまいました。気の緩む仲間内での会話だけに、そのリアクションからはどうも“そんな発想”はなさそうな感じがしました。

 かつて、税制の中枢を司る友人に「家は不動産なのか、耐久消費財なのか。はたまた固定資産なのか、消費財なのか。“不動産”取得税を取って、さらに“固定資産”税を営々と取り続け、おまけに“消費”税を取るのはおかしいのでは」と質問したときも、ほぼ同じような様子で、逃げられました。当時は消費税導入直後で、こちらもそんな疑問が強く、さらに食い下がると、「取れるものは取る。その代わり、全体で税率を極力抑えている」と、なるほど、でもやはり疑問が残る回答が返ってきました。

 しかし、今日の高額なガソリンとその税率を考えればそれもまたしかりで、自動車の取得税から重量税そして高速料金、さらにはそれらすべてに消費税を掛けると、車によっては1キロ走るごとに100円玉を道端にばらまいて走るような事態になります。まあ、CO2削減には効果的なのかも知れませんが……。

 おりしも超々長寿社会を迎え、改めて「家」の価値が問われている今、基本的な生活政策には疑問が多く残ります。とくに耐震強化を含めた住環境整備や医療福祉施策や施設づくりに関して、わが国の生活文化と福祉思想の低さを露呈するものと言えます。実際、建設現場はいまだに土建屋的発想で下請け頼み、医療や福祉の現場も同様、いまだ医師やスタッフの犠牲の上に成り立っています。

 事実、そのことを証明するかのような事件も多発しています。老人の生活や住まいを狙った詐欺や窃盗が横行し、そして増える自殺。さらに地震が起これば多くの人が犠牲となりかねない集合住宅やホテルの耐震構造計算の偽装を許す結果となりました。それでもいまだに談合発注を黙認し、すでに記憶から薄れそうな回転ドアやエレベーター、ガス湯沸かし器の死亡事故など、人身の安全管理意識が低下した行政とその管理ミスによる人災が増え続けており、さらに医療事故や老人虐待も増えていると言われています。

 今、この“老いの国”のために具体的な施策も乏しいままです。何十年も前からこの事態を分かって積み立ててきた命綱の年金さえ、その時々の担当者によるずさんな管理と投資でどこかへ消えてしまったことをとがめ、弁済させるわけでもなく、むしろその頼りなさを知ってか、人々は誰もが先行き不安におびえ“タンス預金”に走ります。国民の総資産の大半を持つと言われる中高年層は、消費などしようと思っていないが現実です。

 こんな中での消費税率のアップでは、景気がますます冷え込むだろうことは、私ども経済の素人にも分かることです。それにつけても、老いの時代を前に、この数年間行われて来たこうしたつじつま合わせの政策が気になります。この先の老いの生活や地震に不安を抱きながらも、皮肉なことに改正建築基準法の過剰な締め付けで、老後の家づくりや施設づくりの着工もできないでいます。

 建築士として実際の住まいづくりの現場に身を置くと、建て主の経済事情とそれを担う中小工務店の苦難の現実から、ますますこの不条理が肌身に染みてきます。いずれ大手住宅メーカーやゼネコンにも大きな影響が出てくることが心配です。その追い打ちとなるのが石油の投機高騰と“穴埋め税”とも言える消費税率のアップでしょう。欧州各国ではすでに消費税率が15〜20%に肉薄する例もあるとの考えからのようですが、その税の使い道に多くの疑問が残ります。

 「住まいは国民の生活と健康を守る福祉」です。もし、本当に欧州の例を見習い消費税を上げようとするなら、“家はもとより病院・福祉施設は無税”にすべきで、その欧州を見習って、本当に数百年は持つ福祉資産としての家づくりをすることが大切です。それとも私たちは、今の消費税が5%になる前のように、ただ「駆け込み着工」をするだけなのでしょうか? 皆さんはいかが思われますか?

 またまた今回も暑苦しく、口はばったい話になってしまいましたが、写真は東京から逃れ、那須にメンテナンスフリー・ケミカルフリーそしてバリアフリーの3つのフリーの終の棲み家をつくった平田さんご夫妻の、涼しそうなお宅の例です。次回は「この夏、那須の平田さんの『亜細亜工芸館』に行こう」と題してお話したいと思います。

プロフィール

天野彰(あまの・あきら)

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。

「日本住改善委員会」(相談窓口・東京都渋谷区松涛1−5−1/TEL03−3469−1338)を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。「日本建築仕上学会」副会長とNPO法人「国産森林認証材で健康な住環境をつくる会」代表。

著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)、『地震から生き延びることは愛』(文藝春秋)、『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)、新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社 実用BOOK)など多数。

天野さんへのご質問、ご意見は天野さんのホームページから

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