大正から昭和にかけ、美人画で注目されながら38歳で早世した日本画家、岡本神草(しんそう)(1894〜1933)。代表作「拳を打てる三人の舞妓(まいこ)の習作」(1920年発表)の前年、実は、同じ構図の絵を描いていた(未完成)。この未完成作品が修復され、制作から89年を経て京都市の星野画廊で初公開されている。翌年の代表作も切り取って展覧会に出品しており、作家の苦闘がうかがえる。
神草は、京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大)の卒業制作「口紅」が第1回国画創作協会展(国展)に入選。神秘的な雰囲気の女性像で、高い評価を得た。
代表作の「拳を打てる……習作」は、第3回国展(20年)の出品作で、3人の舞妓が、ジャンケンに似た宴席の「拳遊び」に興じる様子を描く。展覧会までに完成させられず、中心部分を切り取って出品し、選外佳作となった。画廊を経営する星野桂三さんが87年に神草の義妹宅で、残りの部分を発見。合体されて、現在、京都国立近代美術館に収蔵されている。
今回の未完成作も、この調査時に見つかったが、星野さんは「下絵と思い、表具師に預けたままだった」。近年、神草の日記や制作予定表を検討した結果、この絵は19年の第2回国展出品を目指したが、何らかの事情で完成しなかった作品と判明した。翌年の代表作とほぼ同じ大きさ(175センチ×236センチ)で構図も同じだが、舞妓の表情などが違い、着物の文様も描かれていない。
神草は21年の第3回帝展にも同様の構図の完成作を出品し入選(現在は所在不明)。3年間に3点描いたことになる。星野さんは「デビュー作『口紅』を超えようと苦闘したのでは。未完成作は、仏像に似た舞妓の表情に女性美の神秘性がよく表現されている」と語る。(池田洋一郎)
▽12日まで。星野画廊(075・771・3670)。